欧州で原発回帰が加速=エネルギー安保、温暖化対策で

  欧州で原発回帰が加速=エネルギー安保、温暖化対策で

                            時事通信社   2009 10/17
ブリュッセル時事】 欧州では、原子力発電所の稼働期間延長や新規建設など「原発回帰」
の動きが加速している。
エネルギー安全保障の確保温室効果ガスの排出抑制 といった原発の役割が再評価
されていることが背景にある。

 

 ベルギー政府は、国内に7基ある原発を 2015~25年に段階的に閉鎖するとしていた
従来方針を このほど見直し、一律 25年までに廃止すると方針転換した。
稼働40年を経た3基は、第1弾として 15年に閉鎖する計画だったが、事実上、閉鎖時期を
10年先延ばししたことになる。
同国政府は「 エネルギー安全保障の確保、二酸化炭素排出の抑制、電力価格の安定 」が
稼働期間延長の理由と説明している。

 

 ドイツでも、近く発足するメルケル首相率いる中道右派連立政権は このほど 20年までに
国内の原発を全面閉鎖する政策を 放棄することで 合意した。
同国は、温室効果ガス排出量を20年までに 1990年比で40%削減する国際公約
掲げている。 そのために 国内電力需要の 1/3 を、太陽光発電など再生可能エネルギー
によって確保することを目標としているが、現時点では 約12% にとどまっている。
    鳩山首相は 「 2020年までに 1990年比 25%削減 」と。
メルケル政権は、再生可能エネルギーが 信頼できる安定的なエネルギー源に成長するまでの
「 中継ぎ 」として、既存原発の活用を図る考えだ。 同国では 現在17基の原発が電力需要
の約1/3を賄っている。

 

 イタリアも 既に 脱原発の方針を転換し、新規建設の再開を決めている。



 

  スウェーデンで最終処分地が決定

                             原子力文化 2009年8月号
 高レベル放射性廃棄物の処分地選定は、日本ばかりでなく、世界各国でも最終決定に時間が
かかっています。 そうしたなか、今年の6月、スウェーデンでは 使用済燃料の 最終処分地を
フォルスマルクに決定したと公表しました。
今月は この話題を紹介しましょう。(本誌・岡元博志)

 

 6月、スウェーデンの高レベル放射性廃棄物処分の実施主体であるスウェーデン核燃料・
廃棄物管理会社(SKB社)は、使用済燃料の最終処分地として エストハンマル自治体の
フォルスマルクを選定したと公表しました。
高レベル放射性廃棄物の処分については、各国で実施に取り組んでおり、すでにアメリ
ユッカマウンテン、フィンランドでは オルキルオトを処分地と決定していました。 しかし、
アメリカは オバマ政権になり 方針を転換しています。

 

◆ 2つの候補地から選定
 スウェーデンでは、1993~2000年にかけて、施設研究をするための公募と申し入れを
行ないました。 そして、調査実施を受け入れた自治体を対象に、立地の見通しを調査する
フィージビリティ調査」の実施申し入れを行ない、その承認が得られたオスカーシャム、
ティーエルプ、エストハンマルなど 6つの自治体で調査を実施しました。
?年には、第二段階として、調査結果から、オスカーシャム、ティーエルプ、エストハンマルの
3か所を選定。しかし、ティーエルプは、調査の継続を拒否したため、残りの2つの自治体で、
サイト調査および環境影響評価を実施し、6月にエストハンマルを処分地に選定しました。

 

 選定理由として、エストハンマルは、岩盤の水分含有量が少なく、亀裂が少ないことから
長期安全性に優れており、地域インフラへのアクセスが容易としています。
スウェーデンは、4か所の原子力発電所で 10基の原子炉が稼働しています。発生した
使用済燃料は、1985年から操業している集中中間貯蔵施設(CLAB)で 約4700t (07末)
が貯蔵されています。
スウェーデンでは、これらの使用済燃料を再処理せず 高レベル放射性廃棄物とする
直接処分方式を採用しています。
地下約500m付近の結晶質岩中に、キャニスタと呼ばれる銅製容器に使用済燃料を封入して
緩衝材(ベントナイト)と地層という多重バリアシステムにより放射性廃棄物を処分します。
SKB社は、2010年をめどに放射性安全局などに許認可を申請し、2020年の試験操業の
開始を目指しています。

 

◆ 脱原子力政策を転換
 スウェーデンの発電電力量は、原子力と水力が 伴に約45%を賄っており、残りは火力発電
などとなっています。現在では、電力不足から ノルウェーフィンランドなどからの電力輸入
に頼っている状態です。
スウェーデンでは、1980年の国民投票の結果を受けて、2010年までに すべての原子炉
を停めることが議会で決議されました。
それまでに 代替エネルギーが実用化するとの見込みでしたが、実際に閉鎖されたのは、
バーゼベック発電所の2基のみとなっており、この閉鎖期限(2010)は 1997年に撤廃されています。
政府は 今年2月、気候変動対策のため新たなエネルギー政策を発表しました。2050年まで
に 再生可能エネルギーの割合を50%にするとともに、将来の電力源として原子力発電が
重要な役割を担うとの判断の下、新規の原子力発電所の建設を禁止する現在の政策を転換
することを表明しました。
一方、ドイツでは脱原子力政策を揚げていますが、メルケル政権下で脱原子力政策を撤回する議論も起こっています。