ガラスバッジ(8)

文科省から安全委事務局に送付された 先の資料⑦の 修正資料⑩ は、

以下のごとく、またしても 大小の書き換えをしており、ああでもない こうでもない
と、作文に四苦八苦していることが窺えます。
 
  (  黒:資料⑦と同文水色:新たに加えた文くすんだ青:文の手直し※:削除 
 
 
                                  平成23年4月O日
                                原子力災害対策本部
   福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方(案)
 
Ⅰ.学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安について
 
  現在、避難区域と設定されている区域、これから 計画的避難区域や緊急時退避準備
 区域に設定される区域を除く地域における、学校等の校舎・校庭等の利用の判断に
 ついては、特別の考慮が必要である。 原子力発電所の事故の状況は 続いているが、
 このような地域の環境においては 放射性物質の放出の影響は 比較的小さいので、
 児童生徒等が 学校教育・保育を受ける必要性から 次のように国際的基準を考慮する
 ことが適当である。
 
   国際放射線防護委員会(ICRP)Publication109(緊急時被ぱくの状況における公衆の
 防護のための助言)によれば、上記のような場合においては、事故継続等の緊急時の
 状況における基準である 20~1OOmSv/年と、事故収束後の汚染による被ぱくの基準
  である1~20mSv/年を併用できるとされている。 
 また、ICRPは、2007年勧告を踏まえ、本年3月21日に改めて「今回のような非常事態が
 収束した後の一般公衆における参考レベル(※1) として、1~20mSv/年の範囲で考える
 ことも可能」とする内容の声明を出している。
 
  このようなことから、子どもたちが学校に通える地域においては、非常事態収束後の
 参考レベルを基本とし、参考レベルの1-20mSv/年を学校等の校舎・校庭等の利用判断
 における暫定的な目安とすることで、そこから児童生徒等の受ける線量のできるだけの
 低減を図ることが適切であると考えられる。
 
  ※1 参考レベル:これを上回る線量を受けることは不適切と判断されるレベルであるが、
    これを担保できれば良いというわけではなく、合理的に達成できる範囲で、線量の低減
    を図ることとされている。
 
  また、児童生徒等の受ける線量を考慮する上での保守的な想定として、16時間の
 屋内、8時間の屋外活動の生活パターンを想定すると、20mSv/年に到達する空間線量率
 は、3.8μSv/時間である。
  今回の調査で得られた線量率は半減期の短い放射性ヨウ素の寄与が大きいこと、
 学校等での生活は校舎内で過ごす割合が相当を占めるため、学校等の校庭・園庭に
 おいて 3.8μSv/時を示した場合においても、校舎内の滞在には大幅な線量の軽減
 効果が期待できるため、校舎内での生活により 年間の線量を20mSv以下とすることが
 可能である。
  なお、今回 福島県によって実施された調査で、得られた 20校の土壌分析データから、
 内部から受ける線量の寄与については無視できるほど小さいことが判明している。
 
 
II.学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的な目安を踏まえた福島県における
 学校等を対象とした環境放射線モニタリングの結果に対する見解
 
  平成23年4月8日に結果がとりまとめられた福島県による学校等を対象とした環境放射
 線モニタリング結果及び文部科学省が実施した再調査の結果を踏まえた原子力災害対策
 本部の見解は以下のとおり。
        
    なお、原子力災害特別措置法第20条第5項に基づき避難区域・計画的避難区域
 緊急時避難準備区域とされる地域に所在する学校等については、校舎・校庭等の利用
 は行わないこととされている。
 
 (1) 文部科学省による再調査により、校庭・圏庭で 3.8μSv/時間(保育園、幼稚圏、
 小学校については 50cm高さ、中学校については 1m高さの数値:以下同じ) 以上の空間
 線量率が測定された学校等については、別添に示す留意事項に配慮するとともに、
 空間線量率の十分な低下が確認されるまでの間は、屋外活動を制限することが適当で
 ある(一日 1時間程度の屋外活動の実施は差し支えない)。また、特に保育園、幼稚園
 においては 砂場の利用を控えること。
  さらに、今後 3~4か月間にわたり継続的なモニタリングを実施することが適当o

  (2) 今回のモニタリングにより、3.8μSv/時間未満の空間線量率が測定された学校等
 については、校舎・園舎、校庭園園庭を利用をして差し支えない。
 但し、 今後3~4か月間にわたり継続的なモニタリングを実施する必要性を検討する
 ことが適当。
 
 
Ⅲ.留意点
 この「暫定的考え方」は、平成23年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故を受け、
平成23年4月以降、夏季休業終了(おおむね8月末)までの期間を対象とした暫定的なもの
とする。
 今後、上記学校等における継続的なモニタリングの結果を踏まえ、随時 評価の上 II.で
示した制限措置を解除することもあり得る。 または、事態の変化により、通知内容の変更
や追加的な措置についての助言を行うことがある。
 
  ・・・
 

 
  1.まず、この文書「暫定的考え方」の発出責任の所在は、
   案では、
    4月9日   無記名                                          資料①
    4月10日  無記名                                          資料③
    4月11日  文部科学省厚生労働省 の連名   資料⑥
    4月12日       〃                  資料⑦
   そして、この文書が、
    4月○日   原子力災害対策本部          資料⑩ 
 
   のように変っていき、
   資料⑬を見ると、4月19日発表当日まで「原子力災害対策本部」の名
   記されていました。
   しかし、プレス発表では 突然、 文科省局長名に変っていました。
   すなわち、この重大な決定の責任が矮小化されてしまっていたのです。
    どういう経緯で、このようなことになったのか?
 
    対策本部名」だけというのも奇妙な話で、「対策本部長 菅直人」としていなくては
     ならなかったはずですし、文科省の発出にするなら 「文部大臣 髙木義明 」とせねば
     ならなかったはずです。
 
 
 
   2. 青色文(新たに追加した文)について。
   Ⅰ.の冒頭の文は 今までの案文にはなかったもので、従来は のっけから
 
     国際放射線防護委員会(ICRP)は2007年勧告を踏まえ、「今回のような非常事態が
      終息した後の一般公衆における参考レベル・・・
 
   という文で、どれも始まっていました。
   すなわち、文科省は ICRPの権威を前面に押し出して、
 
      生活地域で学校教育・保育を受ける利益と放射線防護の必要性を比較考量して、
      参考レベル の上限である 20m㏜/年を年間の被曝線量限度の暫定的な目安
 
   とすることを正当化しようとしていたわけです。 
   しかし、この案では、
 
     児童生徒等が 学校教育・保育を受ける必要性から 次のように国際的基準を考慮
     することが適当である。
      国際放射線防護委員会(ICRP)の・・・

   と、この「暫定的考え方」が わが国の主体的判断である印象を出して、
   唐突感のある 20m㏜ を 1~20m㏜ とし、また、ICRP功利主義思想
   である 「防護の最適化」のアカラサマな表現を和らげています。
        これは、先の安全委の記者会見の反響に、文科省が対応した結果では
   ないかと想像されます。
 
        被曝線量を より小さくしようとすると、より大きな費用がかかり、
       過度に対策を行うと、得られる便益に見合わない費用が発生するため、
       費用と便益の観点から放射線防護の最適化を図るという考え方。 - ATOMICA -
         ALARA: 経済的、社会的要因を考慮して、合理的に可能な限り、
                 被曝線量を低減する
 
        防護の最適化における費用と便益とは、誰の費用であり 便益であるのか?
         ――― これが、事故以来 つねに曖昧にされてきました。
 
         文科省は、「生活地域で学校教育・保育を受ける利益と放射線防護の必要性
         を比較考量して」或は「児童生徒等が 学校教育・保育を受ける*必要性から
         と言っているわけですが、  
         利益は、誰の利益or必要性なのか? 又、放射線防護対策は、誰がするのか?
 
          注。 * 部分に、「利益と放射線防護の」を入れると上の黒色の文になる!
           今までは、「生活地域で学校教育・保育を受ける利益」としていたのが、
           この文案で、「生活地域で」と ICRPの用語である「放射線防護」を削除し、
           「利益」を「必要性」と変えている。
 
 
    では、「放射線防護の最適化」を図るとは 具体的にどういうことか?
 
     もちろん、これに先立つ 4月11日 発表の
         「計画的避難区域」と「緊急時避難準備区域」 設定 避難基準とした 20m㏜/年
    と、これを踏まえた、文科省の この「暫定的考え方」という文書でしょう。
 
     すなわち、 
    最適化を図る主体は、被災住民ではなく 政府行政であり、
 
     広汎に広がった放射能汚染の環境下において、
       被曝線量を より小さくしようとすると、より大きな費用がかかり、
     とは、放射線管理区域相当の汚染地帯の全住民を避難させる「避難する
     ではない!)ことで 被曝を少なくしようとすると、政府or東電は お金を出さね
    ばならないが、その費用よりも 住民の被曝による健康被害に要するお金
    の方が より安価になる ~本当に トータルの費用が そうなのか否かは分らないが、
     政府が そう判断したわけですため、住民を被曝環境に置いておくために、
    20m㏜/年を設定したわけで、これを 「放射線防護の最適化」というので
    しょう。
 
     また、過度に対策を行うと、得られる便益に見合わない費用が発生するため とは、
    得られる便益( 避難により 住民の健康を守る )に見合わない費用が発生
    する (国家の利益が損なわれる) と政府が判断したということになります。
             (参考情報平成23年6月17日 日本学術会議会長談話
                http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d11.pdf
             < 避難者増懸念し 福島帰還基準  朝日  2013年5月25日